浜の巨神
150cmオーバー、40kgにもなる巨大な魚がサーフから釣れる。
9年前、その信じがたい事実を知り、無性に興味が沸いた。
その魚は
「オオニベ」
当時狂ったようにシーバスを追いかけていた私にとって、
そのシーバスをデカく太くしたような圧倒的な存在を放っておくことが出来なかった。
オオニベが狙えるサーフは宮崎と遠州灘が有名。
特に宮崎は聖地と言われており、全国からアングラーが訪れる。
宮崎のサーフは波が高く、サーフィンの盛んな場所でもあるが、
12~1月は西風によって波が穏やかになり、シラスウナギやカタクチイワシなどのベイトフィッシュが接岸する。
そして、オオニベのベイトであるニベ(グチ、イシモチ)もこの時期に接岸し、
このニベに付いて普段は深場にいるオオニベがショアキャスティングの射程圏内にまで近づいてくる。
だが、接岸する個体数は圧倒的に少なく、ベイトの接岸に依存しやすいため、
釣りあげることができるのは、ほぼ奇跡。
私も9年間通って2匹。
最初の4年間は何も分からずノーフィッシュだった。
しかし、通っているうちに色々なことが分かり、
徐々にオオニベに近づいている感覚、
とてつもない巨大魚が掛るかもしれないというロマンに魅了され、
9年間毎年通い続けている。
そして今年も・・・
2020年1月11~13日
オオニベ初挑戦となるヒデと共に宮崎に向かった。
[2020/1/11]
伊丹空港から飛行機で55分。
宮崎ブーゲンビリア空港に到着。
レンタカーを借りて早速サーフへ向かった。
ヒデは夕方に宮崎入りするので、それまでに状況を探ってポイントを絞っておきたい。
今回の遠征は3日間の弾丸遠征。
移動には時間をかけられないので、県央サーフでポイントを絞る。
私が宮崎に行くと大抵海が荒れるのだが…
今回は大丈夫だった。
空港近くのサーフから佐土原周辺までのポイントを転々として、キャストと移動を繰り返した。
探しているのはベイトであるニベの存在。
メタルジグをフルキャストし、着底後、ボトムをこすらない程度のレンジをリトリーブする。
ニベはボトムを群れで動いているので、ニベが居ればゴツゴツッとルアーに当たる。
生憎、この日はニベを見つけることはできなかった。
ただ、フックにシラウオが引っ掛かったり、シタビラメが4枚釣れたり、他のアングラーが良型のヒラメをキャッチしたりと、
オオニベ釣りを始めて以来こんなに生命感がある状況は初めて見る。
何かが起こりそうな予感。
夕方、空港でヒデと合流。
まずは腹ごしらえから。
宮崎と言えば・・・
「地鶏炭火焼 天祥」
地鶏を食べなきゃね。
独特の歯ごたえと炭火の香り、めちゃくちゃ旨い。
大満足でホテルへ向かった。
[2020/1/12]
夜明け前。
前日に最も生命感が強く、地形もほどほどに良いポイントに入った。
日が昇ってニベが現れてくれることを祈りながらキャストを開始する。
この日もフックにシラウオが掛り、生命感はありそう。
日が上がり、水面にはサゴシがザワつき始めた。
すると、ヒデの右隣でキャストしていたアングラーがロッドを曲げた。
しかも竿先が叩かれるオオニベの引き。
10分ほどのファイトの末に上がってきたのは90cmのオオニベ。
ベイトに依存したオオニベは1匹ではなく数匹で接岸することが多い。
早速チャンス到来か。
ニベはいないので、オオニベにルアーの存在を気付かせるべく、アクションを交えながら探っていく。
3回シャクリ
↓
フォール (オオニベはフォールに良く反応する)
↓
一瞬ボトムステイ (食わせのタイミング1 オオニベはボトムの物を拾い食う)
↓
リトリーブ (食わせのタイミング2)
↓
フォール
↓
3回シャクリ
↓
(繰り返し…)
メタルジグの使い方はこんな感じ。
メタルジグはフロントにはフックを付けず、リアにスイミングフックを装着する。
フォールスピードを遅くしたいので、ルアーをアスリート12SSPに変更。
キャストして誘いあげから横の流れにドリフトさせながらフォールを入れると、
突然竿先が叩かれ、ものすごいスピードでラインが引き出された。
間違いなく今まで掛けた魚の中で最大サイズ。
ドラグを少し締めた。
次の瞬間、猛烈なヘッドシェイクを食らい、
フッ
と軽くなった。
回収するとルアーのテール部分が無い。
破壊されたらしい。
とんでもない化け物だった・・・
今シーズンの宮崎サーフは魚が多いようで、表層にはサゴシやメッキがおり、
ボトムにはシタビラメがいる。
こんなに生命感のある宮崎サーフは初めてだ。
ヒデもメッキをキャッチ。
私はシタビラメを量産。
サゴシもメッキも遊泳力がオオニベとは違うのでオオニベのベイトにはなりにくいが、
この様子だとニベがいなくとも何か起きるかもしれない。
昼食をとって同じポイントに張り付くことにした。
宮崎といえば・・・
「蜜柑」
チキン南蛮も食べなきゃね。
ポイントに戻り、キャストを再開。
魚の動きと潮汐からすると、ニベが居ない状況でオオニベが釣れるのは
この日の夕方だろうと踏んでいた。
その時間をここのポイントの中でも一番可能性の高い所で迎えたい。
サーフを一通り探り終え、ヒデと作戦会議。
この広いサーフの中で、どのピンスポットが一番釣れそうか。
2人の意見は一致していた。
あのカレントを狙おう。
ポイントまで歩き、キャストを開始。
そもそもこんなに広いサーフで数匹しか接岸していないであろうオオニベにルアーをアプローチして喰わせ、
強烈な引きに耐えて砂浜に引きずり上げるって、ほぼ不可能に近い釣りだ。
しかし、そのオオニベに魅了されてここに来ている。
オオニベに出会うには、タックル、ポイント選択、キャスト、アプローチ方法、ファイト技術・・・
一つ一つ完璧にクリアして可能な限り確率を上げるしかない。
それでも出会えない確率の方が圧倒的に高い。
でも、今のこの状況はかなり良いところまできている。
と、考え事をしていたら…
ジ~~~~~
というドラグ音と共にヒデがロッドを曲げた。
止まらないファーストラン
叩かれる竿先
「オオニベだ。」
ファーストランを耐たら、オオニベが諦めたらしく、スルスルと寄ってきた。
手前のブレイクで最後の抵抗を見せるが、見事に耐え抜き、浜にずり上げ。
すかさずサポートに入り、ランディング。
上がってきたのは
「オオニベ」
釣れちゃった。
サイズは70cmオーバー
オオニベの中では中型の、所謂「中ニベ」だが、
腹の銀色に背中の桃色が美しく、口には立派な歯が並び、
素晴らしいオオニベだ。
写真撮影し、速やかにリリース。
元気に海に戻っていった。
初挑戦で釣ってしまうとは、まさに奇跡。
私もこの釣りを9年間続けて、徐々にオオニベの事が分かってきて、
今回のポイント選択、攻め方で釣ってもらえたことが、とても自信になった。
本当におめでとう。
そして釣ってくれてありがとう。
[2020/1/13]
最終日
あとは私が巨大なオオニベを釣ればミッションコンプリートなのだが。
前日と同じポイントに入るも、フィッシュイーターの気配が少ない。
魚が移動してしまったようだ。
半日投げ倒すも反応は得られず力尽きた。
そして、また一年間オオニベの事が頭から離れない毎日が始まった。
【オオニベについて】
最大で2m弱、40kgにもなると言われている。
水深~150m程度に生息し、オフショアのジギングで釣獲されることが多い。
宮崎や遠州灘ではベイトの接岸、産卵に応じてサーフから狙える距離まで接岸する。
宮崎ではニベ(グチ、イシモチ)がベイトとなる。
オオニベは遊泳速度が遅く、回遊魚のような遊泳スピードの速い魚はベイトになりにくい。
一方、ニベは遊泳速度が遅く、群れを形成し、サイズも20cmと大型で、
オオニベでも捕食しやすく、多量に、高いエネルギーを摂取できることから、
オオニベはニベをベイトとしていると考えられている。
よって、宮崎でオオニベを狙うには、ニベの存在が超重要な要素となる。
【オオニベタックルについて】
ロッド:
オオニベのいるところまでルアーが届かなかったら意味がない。
よって、飛距離を重視したロングスピニングロッドが基本となる。
長さは10ft前後、40gのメタルジグをフルキャストできる硬さが必要。
シーバスロッドやサーフ用のロッド、ショアジギングロッドなど。
リール:
シマノなら4000XG~C5000XG
オオニベはヒットしてからファーストランで100mドラグを出される事は普通に起こる。
なので、ラインは300mは最低でも巻いておける番手が必要。
当然、ドラグ性能の良いもので。
ライン:
飛距離を出すために、できる限り細くしたいが、
相手は1.5m、30kgの巨体。
細くしすぎることはできない。
PEラインの1.2~1.5号がベストだろうか。
オオニベは歯が鋭く、ファイト中に体にラインを巻かれることもある。
なので、リーダーはフロロカーボンの35~40Lb. と太めに。
ルアー:
ニベがベイトであるものの、ビッグベイトを100mも遠投することはできない。
メタルジグのリアクションで狙った方が良い。
今回使用したメタルジグは
「ジャンプライズ ヒラメキジグ」
その他、140mm前後のミノー、シンキングペンシル等
オオニベはとにかくヒットする確率が低い。
釣行日の選択、ポイントの見極め、使用するタックル、キャスティング技術などなど、
あらゆる要素をベストの状態に持って行き、可能な限りヒット、キャッチできる確率を上げる
事が重要であり、その作業が、この釣りの面白い所でもある。